「私には もう 何もない」
「だから もう 何も失くしたくない」
「だから―――」
そうして 少女は
幸せに 堕ちてゆく。
「気付いていないのか」
「それとも 気付いていないふりをしているのか?」
「おろかもの」
月は 彼女を嘲るように 空に笑みを描いた。